一迅社「4コマKINGSぱれっとコミックス」第2弾として今月刊行された、『あにけん』の第1巻。
この作品は、私が「ぱれっと」を読んでいる中で毎月欠かさず読んでいる数少ない作品のひとつです。
この作品の特徴は、とがったところが少ないところ、むしろそういう部分が皆無なのではないかと思える作風にあると思います。
どのキャラクターも、少なくとも表に出た形での「毒」を持っていない。読んでいて、読む側から憎まれそうなキャラクターが存在しないというのは、なかなかに面白いです。作者である高野うい先生のキャラクター作りが上手いのでしょうか。

もし、この作品の中でそういうキャラクターを無理にでも探すとしたら…、「女装少年」というある種のマイノリティキャラ・白石一葉くんでしょうか。彼は男装したところをいまだに描かれたことのない、筋金入りの女装少年キャラ(ご両親の前でも女装で通しているのか?)。
でも彼にしても、私にとってはキャラ付けが面白いという点で安心して見られるキャラのひとりです。キャラクターとしてハマるほどのめりこめるかというと違うんですけどね。ショタキャラとか女装少年キャラも、私は守備範囲内なんだけどな…。
一葉君の双子の妹・双葉さんは、コテコテの「隠れオタク」。私には、その隠しざまが痛々しくて笑えるのです…。第2話・5本目の掛け合いを読んだときは、その掛け合いのリズムのよさに笑い転げた(誇大)ものです。彼女はいちおう、常識人(の皮を被ったオタク)なんだよなぁ…。
そんな彼女の彼氏(未満?)であり、この作品の主人公格というか狂言回しなのが大谷地くん。
彼はアワレです。事あればアニ研の部長にこき使われて、あるときは執事に、あるときは同人誌イベントの売り子に。でもわりとそんな生活を楽しんでいるのが、やっぱりオタクな彼です。
いいお姉さん(いろんな意味で)もいて、恵まれている立場ではあると思うのですが。
そのお姉さんが睦さん。初登場時のインパクトが!(笑) というか、大谷地くんはほんとうにいい位置にいるんだねぇ(笑)。まあお姉さんだから、これっぽっちも意識がないんだろうけども。
しかし第9話。やはり「スク水」命なのかね大谷地くんのようなオタクとなると。正直私は、その辺の属性がないのでねぇ…。

今回、描きおろしとあわせて、高野先生による設定資料や作品のよもやま話が若干載っているのですが…。
部長と大谷地くんは、掲載時の設定に直されたのがいい方向に働いたなと。今のキャラのほうが、どちらもいい感じで軽やかに描かれていていいと思います。

コミックスで通して読んでみると、ストーリーものではないものの全体にひとつ流れがあって、それが自然に流れるように描かれていることがよくわかります。
でもお話としてはどこから読んでも(連載時であれば「いつから」読んでも)自然に入れるつくりになっているところは、作風の「毒」のなさといい、じつは「ぱれっと」のなかでもっとも安定して読める作品、としての地位を得られる作品なのではないかと感じます。
奇をてらったり、派手な動きはしないけど、気がつけば毎月読んでいる。そんな作品として、これからも『あにけん』が続いていってくれることを期待します。