湖西晶『ソーダ村のソーダさん。』新連載
1本目でいきなり、メインキャストの8割が死亡!? なお話。だから、「全員死んでいる」?

説明をすっ飛ばしましたが、湖西晶先生の手による新連載なこの作品。でも名前を「聞くと」、そして各キャラたちのルックスを見ると、それって前作『ソーダ屋のソーダさん。』とおんなじじゃねえの? というキャラクターが揃っております。手塚治虫式・スターシステムです。
それにしても、ここまできっちりしたスターシステムを組んで作品を作ってくるのは、それこそ本家の故・手塚治虫先生以来、例がないのではなかろうかと…。同じ作者が描く複数の作品同士で世界観がつながっている、とかは最近の4コマでかなり多くなっていますけれどもね。さすがに『ソーダ村。』と『ソーダ屋。』は、同じ世界観ではないと思われますが。

しかし、そのキャラクターたちのうち、唯一の男性メインキャラだった斎田さんをのぞく全員が死亡しました。北海道の某所、左右田村の左右田神社が全焼。神社にいたと思われる、なつめちゃん、沙和さん、高原さん、木林さんがお亡くなりになっております(涙)。
でも早くも謎が。
神社が燃えて、神社の主・なつめさん、巫女でありなつめさんの縁者でもある沙和さん、同じく巫女の高原さんの三人が焼死したというのは、まあ理解できます。世の中には、「一家全員焼死」なんて痛ましい火災が年に何度だってあるのだから。
でも、いっけん神社とはかかわりもなさそうな、「リゾート開発会社社員」の木林さんが焼死するっていうのは、巻き添えにしてもちょっと疑問が。始まって早々ぜんぜん早いですけども、早くも「犯人は木林」みたいなはなしになってきたりする?

そんな火災からひとりのこされた斎田さんは元警官。「元」なのは、左右田神社の火災の真相を深追いしたために警察を追われたのだとか。そんな過去がある時点で、この火災に底知れぬ闇が潜んでいることは明らかです。もちろん(?)沙和さんと恋人同士だったから、深追いしたわけですが。
その斎田さんを訪ねてきたのが古浦果子(ふるうら かこ)さん。コーラさんなんだな。はるばる北海道まで左右田村の怪奇を取材に来た記者見習いらしい。
しかし果子さん、冬の北海道にミニスカートで来るってのは命知らずなように思います。そもそもパンツが見えそう、ってちゃんとレギンスは履いてるのね(笑)。まあでも、レギンスごときでは防寒にならないことは、彼女が風にさらされて風邪をひいてるわけですし。
さらにいえば、彼女が「冬」の北海道へわざわざ怪奇現象の取材をさせられに来たというのが、彼女の編集部内での地位の低さ(まあ見習いだけども)をよくあらわしているというか。

そんな風邪ひき古浦さんに、斎田さんが上着を貸してあげるわけですが。斎田さんの上着が「カニのニオイ」って、風情というか情緒があるんだかないんだか。それにしても、鼻水「ツバだそれ(by斎田さん)」をかっとばすひとだね古浦さん…。私にゃ、一息で鼻水を吸い込むことよりも、斎田さんがひっかぶるだけの鼻水ツバを噴射できることのほうが人体の神秘です(笑)。
火災のことを忘れてほしくないから、どんな記事でも協力するという斎田さん。つらい記憶は「忘れたい」と考える人も多いであろうなか、そして事件のことを面白おかしく取り上げることに(表向きは)反発する人も多いであろう中で、なんとしても沙和さんのこと(左右田神社のみんなのことも)を忘れたくないという、斎田さんの強い信念が見えてきます。

取材も進むなか、古浦さんと斎田さんを上から見ているのは雪わらしか。彼女が湖の写真を撮ろうと雪に隠された崖に近づくと、崖の下は奈落の底だった?
いいえ、崖の下にはみんながいたのです。窓を開けたら左右田村。そりゃ古浦さんはびっくりするわな。
斎田さんもいるってことは、死者の世界ではないのだと思いますが…? 「過去」という言葉を作中でよく使っていたり、斎田さんは警官だったり、なにより古浦さんの名前が「かこ」なだけに、やはり過去に行ったのでしょうかねぇ?
とりあえず、死後の世界か否かは、沙和さんあたりの胸(のあいだあたり)をさわってみればすぐわかると思いますが…。
いやつまり、心臓が動いてなければ、そもそも実体がなければ、そこがこの世ではない可能性が高いですから。

そういえば、ここで出てくる雪わらし(仮称)の存在も謎ですね。作品のあちこちに出没してますし、なんといっても扉絵にも存在しているわけで。
でも身元が明らかになっていない。そもそも、ふつうの人なのかもしれないし、私が考えるように妖怪なのかもしれないし。

まあ、第1話だけに各所に謎だらけですが、成分比としては笑い6割・謎4割といったところで、このあたりも『ソーダ屋。』から変わらないところでしょうか。
今回の謎もまた、回を追うごとに深まったり解かれたりされるのか、また楽しみです。


続く作品も後ほど