期待されているところとは違うかもしれませんが…、まずはこの作品から。
川島よしお先生の作品というと、私は竹書房の雑誌で描かれたいくつかの作品を読んだあとに、『PEACH!!』(芳文社刊)を「まんがタイム」誌で読んで、その独特な文脈というか、作品から漂う独特の雰囲気にすっかり圧倒されたものですが、その「独特な文脈」が具体的にはなんなのかが私にはなかなか分からずにその作品を読んでおりました。
ですが今回、双葉社から出版されたこの単行本を読んでみてやっと気づかされました。
川島よしおの描く文脈は、落語が持つ文脈ととてもよく似ていたのか、ということに。
もっとラジカルな言い方をすれば、この作品は、この単行本の帯に「落語×まんが」と書いてあるような、単に「落語とまんがが出会った」から面白くなったのではなく、「落語のようなまんがを描く川島よしおが落語をまんがに描いた」から面白くなったのだと。
というか、もし私の知らないところで川島先生が秀でた落語のコミカライズを既にされていたら、自分の不明を恥じるのみなのですが…。
この作品に登場するキャラクターは、大学の落語研究会(おちけん)の3人(加藤・マチコ・アンナ)ともに、じつは川島よしお先生がよく創られるタイプのキャラクターであったりします。例えば『PEACH!!』に登場するメインキャラクターの、広能・武田・岩井の3人とも重ねあわさる特徴を持っていたり。
もちろん細かいキャラづけ(アンナの津軽弁とか)や性格は異なりますが。
ただこの場合、キャラクターの問題はたいしたことではないと思います。
なんといってもこの作品は、上にも書いたとおり、川島先生が描いたまんがの持つ落語のような文脈と、落語の文脈との融合を楽しむことが第一の作品だと思いますから。
今回の作品でとても意外に思われるところのひとつは、私が読んだこれまでの川島よしお作品では見られなかったものが見られることです。
主人公的存在である加藤の心のなかから、家庭不和によって欠落してしまった「家族」という存在を、落語の「子別れ」という噺によって回復させていく(あくまでも「心の中」でだけ)、という、とても深い「癒し」の物語を描いていくところなのですが。
これには驚きました。私にとっては、川島よしお先生がこういう潜在能力を持つ人とは思っていなかったので。
川島よしお作品は、一度読む程度ではなかなかとっつきにくいものがあると思うのですが、読みこんでいくとその面白さが楽しくなっていくと思います。
落語を知らなくても、まんがが好きな人ならぜひとも読んでもらいたい作品です。
それと蛇足ですが、こういう作品を出版できる双葉社の凄みも感じます。双葉社というと、最近は「文化庁メディア芸術祭」で多くの賞を獲っていく出版社ですが、そうなるのもわかる気がします。
川島よしお先生の作品というと、私は竹書房の雑誌で描かれたいくつかの作品を読んだあとに、『PEACH!!』(芳文社刊)を「まんがタイム」誌で読んで、その独特な文脈というか、作品から漂う独特の雰囲気にすっかり圧倒されたものですが、その「独特な文脈」が具体的にはなんなのかが私にはなかなか分からずにその作品を読んでおりました。
ですが今回、双葉社から出版されたこの単行本を読んでみてやっと気づかされました。
川島よしおの描く文脈は、落語が持つ文脈ととてもよく似ていたのか、ということに。
もっとラジカルな言い方をすれば、この作品は、この単行本の帯に「落語×まんが」と書いてあるような、単に「落語とまんがが出会った」から面白くなったのではなく、「落語のようなまんがを描く川島よしおが落語をまんがに描いた」から面白くなったのだと。
というか、もし私の知らないところで川島先生が秀でた落語のコミカライズを既にされていたら、自分の不明を恥じるのみなのですが…。
この作品に登場するキャラクターは、大学の落語研究会(おちけん)の3人(加藤・マチコ・アンナ)ともに、じつは川島よしお先生がよく創られるタイプのキャラクターであったりします。例えば『PEACH!!』に登場するメインキャラクターの、広能・武田・岩井の3人とも重ねあわさる特徴を持っていたり。
もちろん細かいキャラづけ(アンナの津軽弁とか)や性格は異なりますが。
ただこの場合、キャラクターの問題はたいしたことではないと思います。
なんといってもこの作品は、上にも書いたとおり、川島先生が描いたまんがの持つ落語のような文脈と、落語の文脈との融合を楽しむことが第一の作品だと思いますから。
今回の作品でとても意外に思われるところのひとつは、私が読んだこれまでの川島よしお作品では見られなかったものが見られることです。
主人公的存在である加藤の心のなかから、家庭不和によって欠落してしまった「家族」という存在を、落語の「子別れ」という噺によって回復させていく(あくまでも「心の中」でだけ)、という、とても深い「癒し」の物語を描いていくところなのですが。
これには驚きました。私にとっては、川島よしお先生がこういう潜在能力を持つ人とは思っていなかったので。
川島よしお作品は、一度読む程度ではなかなかとっつきにくいものがあると思うのですが、読みこんでいくとその面白さが楽しくなっていくと思います。
落語を知らなくても、まんがが好きな人ならぜひとも読んでもらいたい作品です。
それと蛇足ですが、こういう作品を出版できる双葉社の凄みも感じます。双葉社というと、最近は「文化庁メディア芸術祭」で多くの賞を獲っていく出版社ですが、そうなるのもわかる気がします。
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