荻野眞弓先生の作品は、長きにわたって数多くの作品が世に出ているわけですが(『ちっちゃいナース(2)』で18冊目の単行本だそうです)、荻野先生の場合、かなり早い時期から独自の「荻野スタイル」のような文体を持った作品を創られていて、しかも出版社が異なっていてもその文体の基本線にぶれがなく、さらにその作品群はどれもみんな読者の支持を得ているというところが、すごいといいますかすばらしいといいますか。
荻野先生のような作品を創られる存在は、4コマまんが界でも数少ないのではないかと思います。真の意味での「4コマ職人」なのだと私は考えていますが。
そんななかでも、『ちっちゃいナース』は読んでいて癒される効能の高い作品。べつにナースを描かれているからそう書いているわけではありません(笑)。

この作品の主人公、ちっちゃいナースの瞳子(とうこ)さんはトランジスタ・グラマー。こういうキャラクターにされたのは100%荻野先生のご趣味だそうですが。
しかし、考えてみると日本にはトランジスタ・グラマーな女性は少ないような気もするのです。リアルな世界でもまんがの世界でも。
普通に考えると、この作品に登場するおおきいナースの洋子さんのような女性で、胸もおしりもおっきくてスタイル抜群! というのが日本のまんがのステレオタイプ。といいますか手塚治虫先生以来、ヒロインだったりバンプだったり、いろいろな意味で目立つ女性はおしなべてそういうキャラクターデザインになっていたような。
まあこれは漫画家さんたちが観ていた外国の映画の影響とかなんとか、というのはだれかの受け売りなのですが。
そういう意味で瞳子さんの存在は興味深いです。
ああでも、成人向けまんがの世界だともっといるのでしょうかねえ? トランジスタ・グラマーなキャラって。

そして、そんな瞳子さんや洋子さんが働く但馬医院の日常を描きつつ、お医者さんを描くまんがだけども、「お医者さんの日常」らしい部分からはわりと脱線していたり、でもそういうネタのほうが面白くなっていたりする、そういう作品です。
あと、この作品の「癒しの効能」に関連するところでは、荻野先生が描かれる線がですね、以前の作品と比べると優しくなっているような気がするのです。
ええ、絵心のない私ですから、単に気のせいなのかもしれませんが。
でもそれが、この作品のキャラクターみんなが持っている温かみを、さらに増しているような、そういう印象を私は受けました。
荻野先生の作品全般に言えることですが、読んでいて飽きさせないところ、単行本になっても読み返したくなる、そういう作品だと感じます。