辻灯子先生の作品は、なにかのきっかけでまとめ読みしたり、単行本を読んでみて連載読みに入ったりしたので、単行本個別の感想はこの本が初めて。
でも冊数は読んでいます(『ただいま勤務中』のコミックスは未読だったか?)。単行本が多いというのは、それだけ根っからのファンも多いということですよね。

私から見た辻灯子作品の特徴というと、絵柄はとてもシリアスなものを描かれているように見えるのに、描かれる世界にはどこまでもゆる?い空気が流れている。そんな落差にとても惹きつけられる作品ばかりです。
ですが、「ゆる?い」となれば、辻灯子作品もご多分に漏れずやはりおバカキャラが活躍する(?)作品なのか? と言われると、ちょっと違うように思います。
辻灯子先生の作品の場合、どの作品でも「単純おバカ」なキャラというよりも、明るい空回りというか、「馬鹿の考え休むに似たり」的なおバカというか、そういうキャラが目立つところがある意味ひねくれていて、より面白さを増しているように感じます。

この『ただいま勉強中』でいえばまず、主人公的位置にいる江端由良さんでしょうか。彼女は別に頭が悪いわけじゃないのです(成績は悪そうだけど【爆】)。思考スピードが追いついてないのではないかと。
「明るい空回り」的な面で目立つのは、由良さんたちの担任教師である渡来先生。このひとは、生徒達と絡んでも、あるいは学校の理事である麗さんを相手にしても、(渡来先生の中では)同じレベルで空回っているように見えます。ある意味平等な人です。見方を変えれば、誰に対しても同レベルな空回りって、心はコドモなのか…?
ともかく、渡来先生が絡んでくる作品のときは、ほんとにひねくれてる感じがしてとても面白く読める気がします。
あと空回りといえばやはり藤堂先輩でしょう。バレー部のエースなのにメンタリティがいまひとつ…。そのために空回りまくっていますからねぇ。
疲れますよねぇきっと。まあそれだけ空回れるのも若さの特権でしょうか。

藤堂先輩の後輩であり由良さんたちの同級生な杜葉菜子さん(ハナちゃん)。1巻のときの口絵ではまん丸顔でかわいらしかったのに、2巻あたりからはだんだんと精悍な顔つきになってしまって、私にとってはちょっと残念なのですが(笑)。
でも内面、というかおバカなところはいまも変わらないので楽しいキャラです(笑)。
そういや理事の麗さんもわりと単純おバカ系というか、天然なひとですよね。しかも天然なところに権力とか財力(?)を持っているところが始末に終えない気が(笑)。
単行本57ページの「クヌギの木とカブト虫」には爆笑しました。

いやほんとに、この作品はどこを掘ってみても面白さが出てくるように感じられてじつに楽しいと思います。
1巻に続いて2巻も読めてうれしいです。