桑原ひひひ先生が、「まんがタイムきららキャラット」で隔月連載されていた作品。
言っちゃあなんですが、先頃終了した『きつねさんに化かされたい!』(4巻【最終刊】は7月に発売ですね)と比べると、地味に連載されていた印象のある作品です。雑誌の真ん中より前に来たことがなかったんじゃあないかなと。
その地味さゆえに、単行本が出るのかどうかやきもきしていたのですが、出てくれてよかったです(笑)。あらためて、単行本で落ち着いて読んでみました。

桑原ひひひ先生の作品は、『きつねさんに?』の場合は「色っぽさ」がかなり前面に出ていたと思うのですが、この作品では登場するキャラクターが男性も女性もコケティシュなのですよね。『ニコがサンタ』では、小学生の双子の妹・文月とサンタクロースのニコとの交流が軸になっているお話なので、かなりコケティッシュな部分を抑え目に描かれているとは思うのですが、とくにニコは、なんだかんだいっても歳不相応なコケティッシュに描かれていると思うのです。
日本語で言ってしまうと、「色っぽい」というのとは違うし、「かわいらしい」というのも違う。やはり横文字で「コケティッシュ」というほかないような。
桑原ひひひ先生が、この作品をこういう設定にされて、なおかつコケティッシュな部分を抑えて描かれたのには大きな理由があったようなのですが、それは作者の後書きを読んでいただくとして。
しかし、連載初期でのニコの会話のセンスって、どうみても30過ぎた私よりも上なような気がするんですよね。子どもは理解できないと思うんだ。いや本編中でも文月は理解できてないのですけれども(笑)。

ゲストで掲載されていた頃から連載初期にかけてのニコは、それはもうかなり暴力的なのですが、そういう部分がとても面白い。
「トッ○」(某社のお菓子)をぷっと吹いて相手の額に命中て。きみは仕事人か木枯らし文次郎か!? って思いましたが(笑)。そのあたりも含めてセンスがやっぱり70年代?80年代だなと。歳不相応です。
そして文月と出会い、というかニコ宅の隣にある文月宅まで押しかけて文月と友人になるニコなわけですが、このあたりの強引さぶりが、桑原ひひひ先生らしい描き方といいますか、やはり面白いと感じます。
サンタなニコなだけにクリスマスへ向かってお話は進んでいくわけですが、この間桑原ひひひ先生が、単純にニコと文月の友情を切りとって描いていくあたりを読んでいて、私はとてもこそばゆい気持ちにさせられたというか。
いうなれば「こどもこどもしてる」というような感じのところが、読んでいる私の心に、快感なのだけれども違和感でもあるような、そんななんともいえない印象を与えたような。

『きつねさんに?』のような色っぽさを求める人には向かないかもしれない作品ですが、もし桑原ひひひ作品を未読でも、この作品をどこかで少しでも読んでみて、そのなかから感じられるはずの「こそばゆい気持ち」を快感に思える人は、ぜひとも読みこんでみると面白いと思います。