「楽園」トークショー始まりました。続きです。

白泉社の飯田さん:はじめて「楽園」に作品を描かれたときの感想を
蒼樹先生:知っている作家さん、好きな作家さんが執筆される雑誌なので緊張しました。でも、「楽園」という雑誌の中では新人のような存在なので気楽に描けるような気持ちもありました。
犬上先生:ストーリー漫画、恋愛漫画の大家といえるような作家さんが揃っている雑誌なので(注:20号で描かれているラインナップとしては、中村明日美子先生、久米田康治先生、シギサワカヤ先生、木尾士目先生、沙村広明先生、かずまこを先生、鶴田謙二先生、宇仁田ゆみ先生、etc…)、緊張というか怖いと思いました。
黒井先生:人づてに、白泉社からオファーが来てまず驚きが。白泉社さんから連絡がきたということでなにかしでかしたかと焦りました。
←飯田さんいわく、黒井先生は携帯電話を持たれていないので(注:家電もだったかな?)連絡手段がとぼしくて連絡を入れるのが大変だと
黒井先生:白泉社だと遠藤淑子先生の作品の大ファンで、その白泉社の雑誌に描けるのは嬉しかったです。
←遠藤淑子先生関連の出版物では飯田さんのお仕事が多くあるとのことで、ここにも繋がりがあったと再確認。

飯田さん:作品を描かれる中で大切にされていること、気にされていることは
蒼樹先生:キャラがのびのび動いているかなと。キャラの心のなかを想像して描いています。
犬上先生:自分が描く等身大、分相応なキャラを描くことを心がけています。キャラでもなんでも、尖ったもの、奇抜なものは描けないので
←飯田さんいわく、「楽園」の打ち合わせで、私は作家さんに極端なことを言うことが多いけれども、犬上さんは私がなにを言っても、ちゃんと犬上さんの漫画を描いてこられる。
黒井先生:プロットで苦労される作家さんが多いと思いますが、自分は歴史(戦史)をモチーフに描くから、その点での苦労はないです。
人間はなかなかうまく描けないけれど、苦労しても苦労してもなかなかうまくいかない、そういう人間を描きたいです。

飯田さん:(注:ここはどういう話題を振られていたか、メモに残っておりません)
蒼樹先生:「楽園」は恋愛「系」漫画雑誌なので、恋愛だけを描く必要がないんですね。
犬上先生: 「楽園」はいちばん自然体で作品を描ける雑誌、恋愛や(それにまつわる性描写など)もろもろ描いても、飯田さんからは「もっとやれ」と言われる。
黒井先生:自分の作品には恋愛は一切ないんですよね(笑)。海戦を描く漫画でどマイナーな艦船を描くので、ペーパークラフトで作画の参考になるような模型をたまに作っています。

飯田さん:複数の作品を描かれるときの気持ちの切りかえ方などはありますか
蒼樹先生:あまり意識はしていません。描く作品を替えるときに「よし、やるぞ」と思うくらい(笑)。
「楽園」のお仕事の時はまずネームを切るので、そこは他と違いますね。
4コマ漫画の内容を考えるときは頭のなかで文章、テキストタイプでイメージが出てくることが多いです。
ストーリー漫画だとネームを切ります。頭のなかではコマ割りはされていません。アニメのような、映像っぽいイメージが浮かんできます。
男女の恋愛ものでも視点は男の子から見た視点で浮かんできます。
犬上先生:「楽園」の作品を描くときは、恋愛描写・性描写をストレートに出せるから、女性キャラの内面をむき出しにできる。男性うけを考えなくてもいいというか。
男性うけを考えなくても…に対して疑問を持たれた飯田さんの問いに
犬上先生:男性が女性に対してもつ処女信仰的なもの、というか。
(注:犬上先生の作品と描かれる女性から、内に秘めた熱情というか、時に獰猛さに感じるほどの熱を感じる私としては、このやり取りにものすごくうなずきました)
犬上先生:作品の切り替えは、自発的ではなくカレンダー(しめきり)に追われるので切り替えざるをえないですね。
蒼樹先生: (犬上先生の発言にむけて)ネームを切った時の勢いで作画をされるほうがスムーズに行く感じがするのですが、そうされない?
犬上先生:ネームを切った時の勢いは、作画よりも他のネームを切るほうに使うほうがうまくいく感じですね。
黒井先生:私は「楽園」と「モデルグラフィックス」以外では商業作品を描いていないので、あまり「切り替え」という意識がなくて…。
宮﨑駿さんが『風の谷のナウシカ』の漫画連載を終えられた時のインタビュー記事かなにかで、「蕎麦を食いながら読める漫画にはしない」、「1ページに11コマ描き込む漫画にしてやれ」と考えながら描いていた、と言われていたのが心に残っています。