ここ最近の小笠原朋子先生の作品で、雑誌連載をまったく読んでいなかったのはこの作品ぐらい。さらにこの作品は、連載途中から携帯配信のマンガになった(「まんがタウンオリジナル」が休刊したため)ので、作品があることは知っていても手は出していませんでした。なのでまったく初読の状態でこの作品を読みました。

読み始めた当初、いちおう常識人気味な兄(でもその日暮らしっぽい)の北里一朗さんと、旅館の跡継ぎが嫌で実家を飛び出した妹(でも金銭感覚はお嬢のまんま)の菜々美さんのギャップと、おもに菜々美さんの金銭感覚のへんさから、なんだこのバカ兄妹は…、と一本ごとに笑いつつ読んでいました。2話目の冒頭はインパクトが強いですね。菜々美さんのごはんはなんでぜんぶ「お取り寄せ」なのかと! しかし兄も負けてません。お面を被ってなにをトリップしているのかと!
「タウオリ」に連載されていた5回分の雰囲気は、同じく小笠原先生が描かれた『さくらハイツ102』(双葉社刊)に似ていると思うのですが。そういえばあの作品も、そのちゃん(ミス佐久鯉!)のバカさ加減に、1本ごとに笑ったなと。

そして携帯配信に移った6話目以降は、新しいキャラも増えてストーリー性ができた作品になっています。ここでは、イラストレーターの卵な絵里さんのキャラクターがぶっとんでいて良いです。いや基本線はまじめな人だとも思うのですが、やっぱりどっかのネジが。
絵里さんのところの兄妹と一朗さんのところの兄妹がそれぞれクロスしながら、物語が面白くなっていきます。ちょっとした波乱も織り交ぜつつ、きちんと感動的なラストに流れていくあたりは、やはり小笠原先生の作品です。
結局菜々美さんは実家に戻ったけれども、妥協したわけではなく、自分の行く道を自分でちゃんと見つけて戻ったわけで。最初から敷かれたレールを行くよりも、展望が開けた未来へ行けそうなのがすごく良い終わりかただと思いました。

それにしても、菜々美さんも北里母も北里父も、10年前に兄が買ってこなかったカレールーにいつまでも固執してたりするあたりを読んでいて、菜々美さんたちの家族ってなんか変! と思わずにいられません。
そして北里母、菜々美さんにその壷で殴り倒せってか(<105P)。どこの「ゆけむり旅情殺人事件」ですか…。
ほんとになんなんだこの家族は(笑)。

笑えて、キャラクターも良くて、量もちょっと多いこの本。値段も普通の4コマコミックスよりちょっとだけ高めですが、そこを出すだけの価値はあると思います。