まず、連載時からこの作品を読んでいて思い、今回コミックスとなり再読して、あらためて思ったことがひとつ。
この作品は、読む側を臨戦態勢にさせるまんがであると! 何の「臨戦態勢」だ? って話ですよね(笑)。

この作品。どこでボケてくるかというか、どこに笑いどころを持ってくるか予想がつかないところが、とても魅力的だと思うのです。
初回は読みきり想定(だから「はっちゃけた」by作者コメント)だったそうなので、例として挙げるのは微妙かもしれませんが、主人公のモクソン、こと木村彩乃さんがプロ歌手デビューするときの衣装にまつわる話なんてもう…。
それまでの彼女のもつ雰囲気とは正反対のイメージをもつ衣装を着せることによって、その服を着ている、というだけで笑いを取っています。
しかも着ぐるみなどのような、「笑いを取るための衣装」ではないところがまた良いです。バランス感覚が効いていると思います。

そういえばこの作品、「笑い」の部分だけにとどまらず、ほとんどすべての部分ですごく繊細な、というか、微妙なバランス感覚のもとにストーリーもキャラクターも作られているのではないかなと、コミックスを落ちついて読んでいたら思うようになりました。
モクソンが所属する芸能事務所の所長さんのキャラクターがまさにそうで、見ていて、「いまにも壊れそう」感が強すぎます。それでいて彼女は恋愛が続かないらしい。
おかしい。ああいう女性なら男が放っておくはずがないと思うのですが。いや、放っておかれないのだけどなぜか長続きしないのか。
この所長さんを中心とした、「微妙なバランス感覚」で読みごたえがあるのが第3話。そして「笑い」という面では、第1話が私のベストでしょうか。
そうそう、その第1話でモクソンにその衣装を着るように命令したのも所長さんですが、あのときの所長さんはほんとにサディストっぽい表情(モクソンをいじめて喜んでいる、というか愉悦に浸っているような)をしてたなと。あれも笑いの対象になりました。

キャラクターという面でいえば、主人公のモクソンさんはあまりにも純真というべきなのか、天然、と言ってしまいたくなるというか(笑)。それと、先にも書いた第1話で衣装を着たときの彼女のおなかはすげえ。
モクソンさんのマネージャーであり、所長とモクソンとの三者で微妙なバランスを演出する工藤さんは、あまりにも恋愛オーラというか、そういうものが強すぎます。知らず知らずのうちに女の子を引っ掛けてしまうタイプの男というか、女難の相が出ているひとだと思う。
モクソンのパチモン出身(笑)なオクソンさんは、タレント向きな性格をしていそうなわりには、ここまで受け身すぎるくらいに感じるのが気になります。まあモクソンの純真さに勝てないのかもしれませんが。

今後どういう展開、というかどういう終わり方に向かっていくかも全然見えませんが、それは先が予想もつかなくて楽しみだということでもあり。2巻以降もほんとうにたのしみです。