佐野妙先生の初コミックスということになるわけですが。…正直申し上げて、初刊行とは思えないのは私だけでしょうか? 佐野妙先生が、12月に第1巻が発売される『森田さんは無口』(竹書房「まんがライフMOMO」連載中)とともに、この2作品でそれだけの量の連載を続けられていることを意味しているわけですが。

この作品、フィクションではあるけれどリアリティにあふれていて、それでいてこの作品の以前のタイトルにもあるような「ふんわり」とした雰囲気の世界の日常雑記的作品のなかに、主人公の塔子さん&果歩ちゃん姉妹のかわいいところが溢れているところがとても楽しいです。
そしてこの作品は、というより佐野妙先生の作品両方に言えることですが、脇を固めるキャラクターを創ることがとても上手いのですね。
塔子さんの後輩である中津さん、そして果歩ちゃんの恋人の飯田くんは言うに及ばず、塔子さんの同僚も、塔子さんが通うスポーツクラブのインストラクターさんたちも、出番の多少に関わらずキャラクターを作りこまれているところはすばらしいと思います。

さらにいうと私は、塔子さんのつかみどころのないキャラクターがとてもよいと思うのです。果歩ちゃんを前にしているときだけでも、いかにもなお姉さんキャラなところもあり、果歩ちゃんが面倒くさがるくらいベタベタに甘えてくるときもあり、飯田くんと仲良すぎな果歩ちゃんにやきもちを焼くところあり、と多面体なキャラクターが楽しくてよいなあと。

さて、実際見たところでちょっと込み入った話をしますと、ジュンク堂や紀伊国屋書店のようなところで売れていることは(この本だけ平積みがかなり少なくなっているのが目立ちます)、この作品がなにか秘めたポテンシャルを持っているように感じさせます。

それはともかく、この作品をコミックスとしてあらためて読めることが、とてもうれしいですね。