佐藤両々先生が刊行されている同人誌『ままの本』シリーズの傑作選的な再録単行本となっている、この『つれづれなるママ本』。
私も、『ままの本』シリーズをこれまで読ませていただいて、感想も何冊分かは書いておりますが、今回、内容がほぼ完全に同人誌のままの状態で単行本になっていることに驚きました。
でも考えてみると、両々先生が『ままの本』で描かれている画は商業誌で描かれている画とはまったく違いますが、この画はこの画で、ちゃんと完成されている画なのですよね。
『ままの本』の感想を書いた時には書かなかったのですが、昨年テレビで放送されていた、江戸時代の禅宗の僧侶・仙涯義梵(せんがいぎぼん)が描いた水墨画に出てくるキャラクター(?)を見たところ、両々先生の自画像によく似ていたのです。そう見ると一見単純な両々先生の自画像も芸術的なものに見えてきて面白いです。

と、話が横に逸れた感がありますが。
『ままの本』というのは、佐藤両々先生がおふたりのお子さんをご懐妊され、そして出産されて、お産まれになったお嬢さんがたが成長されている様子を両々先生が自ら描いた作品です。『つれづれなるママ本』では、その作品の序盤のほう、というのでしょうか。両々先生がご長女のかのちゃんを出産されて、お嬢さんが成長されていく様子を描かれた部分をメインに再録されています。
読んでいて面白いのは、両々先生の作品の描き方が、妊娠されているときは何もかもが手探り状態のような、不安感ではないけれど、未知の世界を旅するような心持ちで、妊婦さんへのハウツー的情報を発信されているように見えたかと思えば、ご長女が産まれると、こんどはお嬢さんに人生の先輩風を吹かせているような感じで、ご長女が成長されていく様子を描かれている。さらにそこへ、お嬢さんのかわいさにメロメロになった両々先生とだんな様(ウサギさん)の視点も入ってきて、とても温かい感情を持って読むことができる作品になっているわけです。

第三者的視点からいうと、特に良いと思うのは、『ままの本』の感想のときにも書いたかと記憶しているのですが、お嬢さんの目線に近づいて描かれた叙情的なお話のあたりでしょうか。お嬢さんが、出張から帰ってこられないお父さんにさみしがって泣きだしてしまうお話とか、お父さんとお嬢さんのお話「休日うさぎ」が再録されているのはうれしいです。
あ、あと「ムーわ」のお話があるのもうれしい!(笑) あれは読んだあともいつまででも覚えていられるお話ですから。

今回巻数表記がないので、この続きの作品が再録された単行本が出るのかはわかりませんが、役に立つ部分もあれば、とても叙情的なところもあったりするこの作品が、再録単行本という形で、同人誌という形態のときよりももっとたくさんの方に読んでもらえたら良いなと思います。