『花と泳ぐ』(芳文社刊)などの作品を描かれている口八丁ぐりぐら先生の新作。
「まんがぱれっとLite」誌に連載された作品ですが、以前に発表された作品『おこのみで!』(「まんがタイムきららキャラット」誌)に似ているようなところが多々感じられます。

なんだかよくわからない家政婦紹介会社「スノウズ」から派遣されてきた家政婦の研修生・ゆきと、なんだかよくわからないうちにスノウズと契約して、ゆきが家にやってくることになった青年・夏生。
無気力、というわけではないけれど、生きていくことに目的を見出せなかった夏生が、ゆきと出会ってどう変わっていくのか。というのがこの作品の中心軸になっています。
まず、ゆきが夏生のもとに現れるわけですが、ゆきがまあ年齢不詳だなあと。夏生たち周りのキャラクターとの対比で見ると小学生高学年から中学生ぐらいにも見えなくはないし。でも家政婦さんのタマゴという設定(?)になっているのなら、少なくとも10代後半にはなってないと大変ですよね。
ですが、子供用携帯電話が似合うお年頃なので、やっぱり見た目は子供、中身もこどもなのでしょう(笑)。

物語の序盤は、家政婦としてのスキルを上げさせてひとり暮らしの手伝いをさせたい夏生と意欲はあっても腕と頭が追いつかないゆきの悪戦苦闘ぶりが、うまいことボケとツッコミになって笑いを引き出しているのですが、途中からはスキルアップをあきらめたのか(誰がだろう?)、笑いよりも叙情的なところに話の中心を持っていって、うまく終盤に物語を動かしているように見えます。
連載のときはともかく、一冊を通して読んでみるとこのあたりのバランスが上手く取れているようになっているのでしょう。
そして、後半の叙情的な部分をさらに後押ししているのが、夏生が働くお店の同僚でもあり、みんなのお姉さん的存在である秋本さん。
秋本さんが持つ、悲しくつらい過去。でもゆきは、そんな秋本さんの過去も包み込むようにして秋本さんを慕っていきます。そんな動きに導かれるように、ゆきとは違った意味で秋本さんを慕っていた、夏生と秋本さんが働くお店の社員・春田さんも秋本さんとの距離を近づけていきます。

こうしてみると、ゆきの存在が、夏生だけでなく、秋本さんや春田さんのことまで変えていったように思います。この作品の人物紹介でも書かれているような、ゆきが癒し、みんなが癒される、という関係だけでなく、人生の停滞したところ、混沌としたところが直るように道筋をつけていくような、そんな存在にゆきがなっていったように思います。
だからこそ、ゆきも最後はステップアップできたのかなと。うまい具合にみんながハッピーエンドを迎えられたのも読んでいてうれしいです。

萌え4コマとしては上質の作品。ゆきちゃんはかわいいし。
でも「萌え4コマ」というものとは違う方向性も見える作品。なんというか、萌え4コマの皮を被った童話的まんが作品といいますか。