松田円先生の新作は、「まんがタイムスペシャル」誌で連載されていたショートストーリーです。
喫茶店の主・将一と、和菓子屋の娘さん・夕子の恋愛模様(?)を綴ったストーリー。
ストーリーといえば、松田円先生は4コマ作品でも『サクラ街さいず』や『つくしまっすぐライフ!』のような、4コマ作品を描き続けるなかでストーリーがゆるりと動いていく作品を、芳文社でよく描かれています。
この作品も、約3年間にわたる隔月連載の中で、将一と夕子の関係はお世辞にもあまり進展したとはいえないのですが(笑)、終わってみれば確実にふたりの距離は縮まっているわけです。
ストーリー的には、ふたりの間に割って入りそうなお邪魔虫的な存在だった三好さんの登場あたりから、ゆったりとは言えども事態は急展開を迎えて、読んでいるほうとしてはどういう風に結末をつけるのかどきどきしながら読んでおりました。まさか「あの」将一さんに強奪愛はないよなあと思いつつ、そんな展開もありうるのか!? と思っていたのですが、やはりこの作品らしい滑らかな終わり方を迎えたのは安心できましたし、それほど不幸な人も出ずに終わったのは(いるとしたら三好さんぐらい?)、それだけでうれしい(笑)。
と、この作品の前半では、各話ごとに題名でもある「それだけでうれしい」というフレーズが必ず1度は使われているのですが、連載時も「そこまでせんでも…」と思わないこともなかったりします(笑)。
それにしても、「歯がゆい恋」って良いですね。分別のついた大人だからこそそうなってしまう感じの。この作品の場合は、将一さんの性格のせいでもあるような気はしますが(笑)。
夕子さんの「歯がゆい恋心」が、読んでいるこちらの心を打つのです。外面的にはさばさばした明るいひとなのに、内面には歯がゆい恋心を持つというところもまた良い。
そういう意味でいうとこの作品は、『松田円先生 meets 「もうひとりの松田円先生」』なのかもしれません。
この作品のあとがきで、この作品が創られたきっかけが描かれているのですが、それを読むと、上の言葉の意味をお分かりになる方もおられるかもしれません。
そうすると、いちばんそれらしいキャラクターは三好さんなのですよね。三好さんもまた、じつは歯がゆい恋心を抱えていて、彼から感じる雰囲気からも、もうひとりの松田円先生世界の住人のように思えて。三好さんがこの作品内でしていることは私はあまり好きじゃないのですが、私も含めた読む側の心に残りやすそうなひとではあると思います。
あとこの作品の、物語の情報量の積み上げ方の上手さ、というかもしかしたら、松田円先生のストーリーの描き方の熟成の深まり方、なのかもしれませんが、そこもとても良かったです。
当初はかなり単純化したストーリーだったように思えるのですが、徐々に物語の糸のより合わせ方が太くなっていき、三好さんが現れてどんどん複雑化した話になっていくあたりは、読んでいてとても楽しいです。引き込まれるのですね。
手軽に読みやすい、入りやすい作品なので、読んでもらえれば「松田円先生の描き方」をよく知ることができるのではないかと。
喫茶店の主・将一と、和菓子屋の娘さん・夕子の恋愛模様(?)を綴ったストーリー。
ストーリーといえば、松田円先生は4コマ作品でも『サクラ街さいず』や『つくしまっすぐライフ!』のような、4コマ作品を描き続けるなかでストーリーがゆるりと動いていく作品を、芳文社でよく描かれています。
この作品も、約3年間にわたる隔月連載の中で、将一と夕子の関係はお世辞にもあまり進展したとはいえないのですが(笑)、終わってみれば確実にふたりの距離は縮まっているわけです。
ストーリー的には、ふたりの間に割って入りそうなお邪魔虫的な存在だった三好さんの登場あたりから、ゆったりとは言えども事態は急展開を迎えて、読んでいるほうとしてはどういう風に結末をつけるのかどきどきしながら読んでおりました。まさか「あの」将一さんに強奪愛はないよなあと思いつつ、そんな展開もありうるのか!? と思っていたのですが、やはりこの作品らしい滑らかな終わり方を迎えたのは安心できましたし、それほど不幸な人も出ずに終わったのは(いるとしたら三好さんぐらい?)、それだけでうれしい(笑)。
と、この作品の前半では、各話ごとに題名でもある「それだけでうれしい」というフレーズが必ず1度は使われているのですが、連載時も「そこまでせんでも…」と思わないこともなかったりします(笑)。
それにしても、「歯がゆい恋」って良いですね。分別のついた大人だからこそそうなってしまう感じの。この作品の場合は、将一さんの性格のせいでもあるような気はしますが(笑)。
夕子さんの「歯がゆい恋心」が、読んでいるこちらの心を打つのです。外面的にはさばさばした明るいひとなのに、内面には歯がゆい恋心を持つというところもまた良い。
そういう意味でいうとこの作品は、『松田円先生 meets 「もうひとりの松田円先生」』なのかもしれません。
この作品のあとがきで、この作品が創られたきっかけが描かれているのですが、それを読むと、上の言葉の意味をお分かりになる方もおられるかもしれません。
そうすると、いちばんそれらしいキャラクターは三好さんなのですよね。三好さんもまた、じつは歯がゆい恋心を抱えていて、彼から感じる雰囲気からも、もうひとりの松田円先生世界の住人のように思えて。三好さんがこの作品内でしていることは私はあまり好きじゃないのですが、私も含めた読む側の心に残りやすそうなひとではあると思います。
あとこの作品の、物語の情報量の積み上げ方の上手さ、というかもしかしたら、松田円先生のストーリーの描き方の熟成の深まり方、なのかもしれませんが、そこもとても良かったです。
当初はかなり単純化したストーリーだったように思えるのですが、徐々に物語の糸のより合わせ方が太くなっていき、三好さんが現れてどんどん複雑化した話になっていくあたりは、読んでいてとても楽しいです。引き込まれるのですね。
手軽に読みやすい、入りやすい作品なので、読んでもらえれば「松田円先生の描き方」をよく知ることができるのではないかと。
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