トコバコ
サルフォカゴス
数多くの商業誌作品を作り出している作者が、その作品群の登場キャラを、作品や出版社の枠を超越して描いた作品。
いつも読んでいる作品のキャラクターの持ち味がしっかり活かされていて、その土台があってのパレラル世界で未知の物語を作るので、面白くないわけがない。
自らの作品であっても、出版社の枠を外して物語を作るのは、商業誌ではなかなかできないことではないだろうか。その舞台でしかできない組み合わせを読めるのは至福。
これまでの作品を描いたときの思い出についての記述も、作者の過去の作品を味わうときの指標となると思われる貴重なもの。
次の同人誌作品を読む機会がぜひほしい一冊。

保健室の恋人
渚のハイカラ金魚
読んだ後、この作品から私が感じたイメージは、「ハートウォーミングなエロ漫画」だった。
保健室の先生はどこまでも優しく、優しい先生を好きになる生徒もまた、優しい男の子。
若さゆえに愛情と性欲の発露を隠せない生徒と、それを感じとり、自らも生徒への愛情と性欲を隠せなくなる保健室の先生。その様子を素直に描いているところに、とても心温まるものを感じたのかもしれない。
読んでいて、ベッドの上でも常に二人が幸せそうにしているのも、もちろん心温まるところ。
ポジティブな方向に心に残るものを感じさせる作品。

みちるダイナマイト!
猫丸印
商業誌連載の再録本。
大学で経済学を教える、美人でセクシーな先生のもうひとつの顔は…。
「二つの顔」は漫画でも時折見かけるモチーフだが、この作品では独自のキャラクターと独特のギャグを読ませることで(特にセクシー系で)、目新しさを感じさせているように思う。
大学講師としてもミュージシャンとしてもドタバタ感があるのは楽しいが、実際にそんな生活をしていたら疲れる、よなあ…(読んでいるほうも?笑)。
先生としてもミュージシャンとしても、もっと成長した姿を読み続けたかったと思うのは、人情だろうか…。ともあれ、同人誌という形でまとまったのはよかった。

ヒーロー途上、ヒロイン未満。
T-NORTH
松本ミトヒ。の商業誌作品、『メガミのカゴ』の後日談作品。商業作品として世に出る切っ掛けとなったのはコミティアでも頒布されたオリジナル作品だった。
それが商業連載を経て、再び同人誌という形で後日談が世に出るとは、感無量。
作者が商業連載時にやってみたかった展開がラブコメだったと知り、私が読みたかった展開と同じだったことが分かって驚いたが、この作者はラブコメ含むさまざまなモチーフの作品を描いてきた人なのでさもありなん、とも感じる。
キャラそれぞれの語りが長いのも、いつもの松本ミトヒ。作品だと感じるが(笑)、主人公の宮本明美と岡田浩輝の二人のセリフの掛け合いからハッピーエンドへ紡いでいく展開の作り方も、いつもの松本ミトヒ。作品で安心できる。

赤ずきんちゃんと狼さん
ムンチャイ
赤ずきんちゃんと狼が出てくるおとぎ話をモチーフして、キャラクターもかわいく描かれているが、内容としてはけっこう大人向きなものになっている。
読み進むごとに、赤ずきんちゃんの周りの世界や人々がどんなことになっているのか、疑心暗鬼になってしまう。これは続きが早く読みたくなる。
場面場面で出てくる、お色気風味なギャグも面白く決まっていて、作者の実力がきちんと出ている一冊になっていると感じた。

ぼくたちつきあってます…?
ムンチャイ
好きな春川さんに告白したはずが、なぜか告白の行き先が別の人で…というモチーフだが、その冬月さんもけっこう魅力的なのでどうすれば…という主人公の夏目くん。もう本格的に付き合っちゃえばいいでしょう(笑)。
冬月さんのキャラがなんかいい。素直じゃないんだけど、夏目くんと話しているうちにわりとその気になってしまうあたりが、かわいらしいと感じる。

女の子定食
やたこ
商業誌作品再録本。
商業で掲載された回数は少なかったが、定食屋さんという作品舞台のアイデアや、女の子にしかサービスできない女主人・結菜とその友人・春香というキャラクターはよかったと思うのだけれど。
2回目の掲載で登場した、男の娘風なひなたを女の子と勘違いしてサービスしてしまう結菜、という展開がじつに面白い。描きおろしでさらに悪化(?)してしまう結菜もかっこいい。女の子は正義!

シュガーキューブ同盟
すこやかペンギン
主人公3人の苗字とタイトルが見事にもじられているのだが、いいアイデアだと感じる。
短い作品だが、3人のドタバタぶり(「ずん子」笑)と、キャラクターの「地に足がついている」感がたまらない。思わず読み入ってしまう作品。