「夜蝕病棟」 渚のハイカラ金魚(あ07b)
看護士の女性と入院患者の青年とのあまりにも潤いのないセックス。看護士が主導権を握っているにもかかわらず、看護士からは青年への情感が全く見られない。
情感の無さの、あまりにも悲しい理由は後に明かされるが、最後の転回によって訪れる救いのない結末と相まって、物語に叩きのめされ、心の中で涙が拭いきれなくなる。
美しく、そしてせつなすぎる物語に、かき乱された。


「お母さんは水の中6」 渚のハイカラ金魚
ことし商業単行本にもまとめられた、金魚とひよこの親子(?)のかわいい4コマ作品。
今回は、金魚にあるまじき肥満ぶりに苦しむことになったきんぎょちゃんがダイエットに悪戦苦闘するナンセンスぶりが笑いと直結していてニクい。
しかし、実在の金魚もそれほど動かずに餌を食べているように見えるのに、なぜ丸々と肥えたきんぎょちゃんのようにならないのだろうか…


「ふかふか(2)」 やたこ(ま21a)
高校生のちはやと、幼稚園児のひろのふたりのお話を綴った商業再録本の完結を告げる2冊目。
1冊目でのちはやとひろのなかよしぶりは2冊目でもそのままだが、2冊目では、成長していくちはやとひろ、そして、ちはやの幼稚園の篤人先生へのほのかな恋心も加わり、読んでいてのわくわく感も増していく。描きおろしで夢と恋心をかなえた、ちはやの笑顔がまぶしい。


「Carnival After」 T-NORTH(Z06b)
商業誌に掲載された作品の後日談もの。作者は「男の娘」もので新たな境地を開拓していることをはっきり感じさせる。
可愛いもの、美しいものに対してエスカレートしていく感情は、いかなる条件・障害をも超越できるものである、と声を大にして言いたくなる作品。
主人公の郁己(いくみ)のかわいらしいこと…

「06」 ogasite(は18b)
以前に刊行した同人作品の後日談と、商業作品の後日談を収録したもの。
眼鏡男子をモチーフにした作品では、眼鏡男子の田中くんが眼鏡をかけたり外したりするたびに恋心を不安定にさせる、鈴木さんの感情のアップダウンが見ていて楽しい。そして、自分の背が田中くんよりも高くなってヘコむ鈴木さんの姿もまた愛らしい。
商業作品の後日談は、バカ3兄妹(失礼!)がさまざまなベクトルにバカやってるところが笑える作品。空回りバカ系な兄二人の存在が笑いをさらに盛り上げている。

「BLACK BLACK BLACK」 猫丸印(み06b)
軽妙に怪奇を描いた作品あり、叩きのめされるような怖さを描いた作品あり、と三者三様の怖い話を描いた三人誌。
女の子(?)同士の化物を描いた作品は、キャピキャピとした女の子のじゃれあいを描いていながら、場面転回で一気にお互いの怖さが余すところなく描かれている。

「ようちえんのミカタ」 ムンチャイ(ま19a)
商業誌で連載された2作品の再録誌。
幼稚園児たちが主役だった前半は、はしゃぎまわる園児たちの動きが目まぐるしい。
前半作のスピンオフ的に連載された幼稚園の先生を描いた作品は、新米先生のあたふたぶりに、自分の社会人なりたてのころもあんなだったなあ…と、ある種の共感を持って読むことができた。

「24時間チェリー」 Nekomitsu
投稿した後で気づいたのだけれど、どこのサークルで頒布していたのかわからない…。
女生徒と女教師の恋愛短編。女教師に惚れる強気女子がかっこいい。いつの間にか引きずられる女教師の弱さもかわいい。